2018年度 スチュワードシップ研究会「企業から見た投資家(運用会社)のエンゲージメント活動について」
開催日
2019年1月23日(水)
ゲストスピーカー
- 安藤 聡様
- オムロン株式会社 取締役
「オムロンにおける企業価値創造の取り組み~投資家によるエンゲージメント活動への期待~」
研究会メンバー
- 池尾 和人(座長)
- 立正大学経済学部 教授
- 松尾 直彦
- 西村あさひ法律事務所 弁護士
- 河村 賢治
- 立教大学大学院法務研究科 教授
- 大場 昭義
- 日本投資顧問業協会 会長
研究会専門メンバー
- 荻原 亘
- 野村アセットマネジメント株式会社 執行役員 運用調査副本部長 株式CIO
- 藏本 祐嗣
- 大和住銀投信投資顧問株式会社 責任投資オフィサー
- 豊田 一弘
- シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社 日本株式ファンドマネジャー
- 中野 次朗
- 日興アセットマネジメント株式会社 株式運用部長
- 平山 賢一
- 東京海上アセットマネジメント株式会社 執行役員 運用本部長
- 桝田 明敏
- アセットマネジメントOne株式会社 常務執行役員 運用本部長
- 水澤 祥一
- JPモルガン・アセット・マネジメント株式会社 取締役兼株式運用本部長
オブザーバー
- 岡田 則之
- 日本投資顧問業協会 副会長専務理事
2018年度のスチュワードシップ研究会は、投資家との対話のご経験が豊富で、かつ、積極的に取組んでおられる、オムロン株式会社 取締役の安藤 聡氏にゲスト・スピーカーとしておいで頂き、企業から見て、実効性のあるエンゲージメントとはどのようなものか、あるいは、実効性が乏しく、むしろ時間の無駄になるようなエンゲージメントとはどのようなものかなどについて具体的にお話し頂きました。その後、参加メンバーによる自由討論が行われました。安藤氏のお話の一部を、以下に紹介します。
- かつては、或いは今もと言えるかもしれませんが、インベストメント・チェーンにおいては「主従関係」がありました。投資家が「主」で、企業経営者が「従」という意味です。企業経営者が良く耳にする「面談の際はきちんと質問に答えろ、余計な説明はするな」という発言が象徴しています。それに企業側も慣れきっていて「本当はこういうことを話したいのだけれども、なかなか話す機会がないし、話そうとすると、そんなの興味がないと怒られる」といった経験が企業と投資家の面談を、質の低い・ショートタームな質疑応答にしてきたわけです。
ですから、そのような形式的な面談が終わった後に、企業経営者は「投資家は全く分かっていない。経営の経験もないくせに、偉そうなことを言っている。今後は絶対に会わない」となり、未だにCEOがIRをしていない上場企業は結構あります。これでは、思考停止であり、コーポレートガバナンス責任を果たす必要条件すら満たせません。
一方で、投資家も「不満足な面談だった。あのCEOは駄目だ、まったく経営を分かっていない」となってしまい、互いの距離は埋まらないどころか更に疎遠になります。従って、企業も投資家も相手が分かっていないと思うのであれば、分からせるような努力をすれば、ウィン・ウィンの関係を構築できるはずです。
ですから、当社は上場企業としてやるべきことをきちんとやった上で、投資家とは対等の関係で対話をし、そして対話の先にある本当のエンゲージメントをしたいと考えています。 - (オムロンの経営の特徴の一つに)グローバル統合リスクマネジメント力というのを挙げています。私も取締役としてグローバルリスクマネジメントをモニタリングしていますが、相当な投資をしています。池尾先生が先週ネットで「そもそもバリュエーションの良い企業のガバナンスを投資家は見ていない」というコメントを発信されていましたが、私も全く同感ですし、ガバナンスを考慮しない投資判断はナンセンスであり、投資家として論外の行動であると感じます。
そもそもESGのリテラシーとか、ESGを管理するシステムができない企業は、最初から投資対象として外さなければ駄目です。ですから、ESGインテグレーションとリターンの相関関係は何となくあるのだけれども、因果関係は検証できないとおっしゃるのですが、本音でESG投資がされていないのですから至極当然のように感じます。つまり、リターンが良ければ目をつぶるのであれば、結果としてESGの良い企業がアウトパフォームすることはあり得ないはずです。トラックレコードがないとか、結果的にアカデミアの実証研究がそこまで至っていないということはありますが、企業は本音でコーポレートガバナンス責任を果たし、投資家は本気でスチュワードシップ責任を果たすようになれば、絶対にESGの良い企業のほうがアウトパフォームすると私は信じています。 - 投資家によるエンゲージメント活動への企業側からの期待を一言で申し述べると、企業はきちんと説明責任を果たしますので、その上で経営の改善につながるような示唆に富んだ具体的なアドバイスをいただきたいという点に尽きます。そうすると企業と投資家は、必ずWin-Winの関係が構築できます。
活発な意見交換により、企業と機関投資家におけるエンゲージメントのあり方について示唆に富む大変興味深い内容になっております。是非ご一読ください。


